ピッチを上げても速度は同じ/急ピッチで進めても時間は縮まらない
By Dr. K. Kinoshita(木下和好): YouCanSpeak 開発者・同時通訳者・元NHK TV・ラジオ 英語教授
英語スピーキングのための重要ポイント
英語を自由に又上手に話せるようになるためには、次の6つが重要ポイントとなる。
- 適切な単語を適切に使える
- 適切な発音が出来る
- 適切な英文を瞬時に作り又音声化出来る →(YouCanSpeak の使命)
- 強い習得願望を持つ・絶対的必要性を感じる・楽しさ/ワクワクを実感
- 習得能力を信じる
- 適切な学習法で学ぶ
日本では簡易英語辞典に匹敵する程の数の和製英語が使われている。これらの和製英語は、英語スピーキング力アップのための6重要ポイントの内「1.適切な単語を適切に使える」と「2.適切な発音が出来る」の2つに、大きなマイナス影響を与えている。と同時にそのまま英語としては使えない和製英語に少し手を加えて再利用できるようにすると、英語力を一機に伸ばすことも可能となる。
和製英語のタイプ
- 英語として全く使い道がない
- 日本語と英語の合成語
- 発音が本来の英語からかけ離れている
- 意味が本来の英語とは異なる
- 品詞(動名詞とか過去分詞 etc)の使われ方が本来の英語とは異なる
- 正しい英語と勘違いされている和製英語
ピッチの日本での使われ方
ピッチという英語の単語は日本語の中に溶け込んでいて、テレビのニュースの中でも、あるいは新聞・雑誌等でも頻繁に使われている。特に時間的制約がある事柄に関して、「工事が急ピッチで進んでいる」とか「」ピッチを上げないと間に合わない」とか言う表現を使う。日本人全員がその意味を100%理解しており、ピッチの使い方に疑問を抱く人はほとんどいない。すなわち日本で言うピッチと英語のpitch は同じ意味であると思われている。
私がNHKの英語番組を担当していた時、「急ピッチでとかピッチを上げると表現してもスピードを上げるという意味にはなりません」と言った所、「あなたは英語の基本を知らない!」という抗議のはがきが届いた。念のため、10人のアメリカ人とイギリス人の友人に電話で再確認した所、全員が日本人はpitchの意味を勘違いしていると言った。
日本では、「ピッチを上げる・急ピッチで・急ピッチで生産する・急ピッチで進む・~の準備を急ピッチで進める」などの表現が良く使われるが、全て「ピッチ」が「スピード」の意味になっている。いつ誰がどんな理由でピッチにスピードという概念を付加し、普及させてしまったかはわからないが、英語のpitch にはスピードの概念はない。
英語の pitch の代表的な意味は以下の通りである。
- 音の高さ
- サッカーなどのグラウンド
- 野球の投球(pitcher は pitchする人の意味)
- 屋根の傾斜
- 感情などの度合
- コールタール
Pitchは本来波形の山と山、あるいは谷と谷の距離を示す言葉なので(あるいはそれに類似した意味)、音の場合、ピッチを上げると音程は高くなるが、スピードが上がることはない。
英語を話す時、日本式ピッチの概念を表現したい場合は、次のように言えば良い。
「急ピッチで」→ at a rapid pace / at high speed 等
「ピッチを上げる」→ speed up / move into higher gear 等
「急ピッチで生産する」→ produce at a rapid rate 等
「急ピッチで進む」→ move ahead at a fast pace / pick up speed 等
「~を急ピッチで進める」→ put ~ on a fast track 等
ピッチを本来の英語の意味として再利用
ピッチが和製英語だからと言って、記憶から消し去ってしまう必要はない。せっかく慣れ親しんだ単語なので、意味に修正を加えるだけで、色々な表現が出来るようになる。
pitch speed = 野球の投球スピード
best pitch = 野球の決め玉
high pitch = 野球のハイボール
low pitch = 野球のローボール
highest pitch = 最も高い音
perfect pitch =絶対音感
poor pitch singing = 音痴
quick pitch =(反則投球)打者が構えていないのにピッチャーが球を投げること。
同時両方向通訳者/ 同時通訳セミナー講師。文学博士。NHK ラジオ・TV「Dr. Kinoshitaのおもしろ英語塾」教授等、各メディアで活躍