表現を覚えたらその場しのぎ、文章構成を覚えたら無限大

中国の格言に「魚をくれたら1日食いつなげる。魚の釣り方を教えてくれたら一生食いつなげる。」というものがある。「アラジンと魔法のランプ」に例えると、3つのお願いが叶うより、願い事を叶えることができるランプ自体の価値の方が高いという発想だ。この発想こそが、ユーキャンスピークの「全発想領域カバー型」の原点である。
執筆:ドクター・キノシタ

困った時に役立つ道具あるいは手段には2種類ある。「急場しのぎ的」なものか、あるいは「いつでも必要な時に役立つもの」である。これを英語の学習に当てはめると、場面を想定した学びと、どんな場面にも対応できる学び、である。

Situational Study(場面を想定した学び)

海外旅行とか外国のお客様を食事に接待するといった具体的な場面が想定される場合、テーマに沿った英文を覚えることは重要かつ有益である。これは「Situational Study(場面を想定した学び)」あるいは「目的型学習」と呼ばれるものである。ちまたで使われているほとんどの英会話教材はこのタイプである。又ネーティブスピーカーが教える場合も、Situational Study の方が教え易いし質疑応答もし易いので、必然的にこのタイプの学習となる。この学習法の特徴は、ある英文をゼロから作るノウハウとプロセスを習得するのではなく、「最初から英文ありき」の学びであることだ。言い換えるなら、「この表現は大切ですぐに使えるから言えるようにしましょう」という学び方である。これは誰かが釣った魚をもらうのに似ている。そこには魚の釣り方のノウハウが無い。

Situational Study の弱点

Situational Study の弱点は、「急場しのぎ」的学習になることだ。せっかくいくつかの英文が言えるようになっても、そういう場面に遭遇した時にしか使うことが出来ない。たとえば “I’m afraid I got lost. How can I get to ~?(私は道に迷ってしまったようです。~ にはどう行ったらよいでしょうか)」という文章をスラスラ言えるようになった場合、現実の世界で実際に使うには、道に迷う必要がある。道に迷って困っている時でない限り、有効に使うことが出来ない。

誰しも経験していることであるが、生きた会話は、短期間にその内容や話題が変化して行く。気付いたら話し始めた時の内容とは全く違う会話になっていることが多い。会話に加わっているひとりひとりの発言が、「道の曲り角」に似た働きをするからだ。運転の場合、曲り角に「行きたい場所の地名と矢印が付いていれば、何のためらいもなく進路変更をする。日常会話も同じで、「話題の曲がり角と矢印」が多く現れるので、どんどん会話の進路が変化して行く。そうでなければ生きた会話とは言えず、又友達と楽しく語り合うことも出来ない。

「魚」ではなく「釣り方」を習得する

このように内容が変化して行く会話について行くためには、「魚」ではなく「釣り方」を習得する必要がある。すなわち完成した英文(=誰かが作った英文)を丸暗記的に覚えるのではなく、状況に応じた内容の英文をゼロから瞬時に作り出す方法を習得する必要がある。それはSituational Study ではなく「全発想領域カバー型」の学習である。すべての英文はどんなに短くてもあるいはどんなに長くでも、有限の要素の組み合わせで成り立っている。それらは「釣竿」に似ている。それらの要素を色々な組み合わせで脳裏に刻む練習を積み重ねることにより、英文をゼロから作り出すことが出来るようになる。すなわち今頭に思い浮かぶことを、瞬時に英作文し又瞬時に音声化することが出来るようになる。その結果、英文を誰かに用意してもらわなくてもいつでも自分で作り出すことができるので、会話の内容がどのように変化しても、その会話に加わりついて行くことが出来る。「全発想領域カバー型学習法」と呼ばれる理由はそこにある。

「魚」と「釣り方」が違うように「英文」と「英文を作り出すノウハウ」は異なる。「魚」より「釣り方」の方が有益であるように、「誰かが作ってくれた英文を言えるようにする」より「自分で英文を作り出すノウハウ」の方がはるかに有益である。

この記事の監修・執筆者
英語スピーキング教材YouCanSpeak、英語リスニング教材YouCanListen開発者
同時両方向通訳者/ 同時通訳セミナー講師。文学博士。NHK ラジオ・TV「Dr. Kinoshitaのおもしろ英語塾」教授等、各メディアで活躍
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