【こどもの英語教育に重要な事は?】効果的な学習法や年齢、時期について解説

こどもの英語教育を母国語レベルに引き上げる確実な方法

こどもの英語を母国語レベルに引き上げるための一番良い又確実な方法は、9才以下の時に、毎日最低1時間、英語だけの環境の中で生活させることであるが、普通の日本人の家庭に生まれ日本国内で育つ子供達には、そのような環境提供は難しい。

でも環境的に不利な状況下にある子供であっても、英語の学びの中に7大要素が揃っていれば、かなりのレベルに達することが可能となる。

英語漬けでない子供の効果的学習7大要素

以下が英語学習の7大要素である。

  1. 1.最低限の学習時間が確保されている
  2. 2.英単語の領域に留まらない
  3. 3.意味と音声が合体する練習になっている
  4. 4.自分の意志で言い方を選択している
  5. 5.能動的能力の練習が実行されている
  6. 6.英語が音読出来るようになる
  7. 7.12才になるまでは続けさせる

「子供の効果的英語学習法(その2)」では後半の3大要素について考えてみよう。

こどもの英語教育と親の話すことばの関係

残りの3大要素の話題に移る前に、こどもは環境に大きく影響されるという課題に触れてみよう。

母国語(mother tongue)は、子供の一番近くに存在する母親が話すことばを習得するからそう呼ばれるのではない。

なぜなら世界には、生まれてからずっと父母と一緒に生活しているにも関わらず、父母が話すことばではなく、異なる言語を母国語としている人が数限りなくいるからだ。

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親の話すことばが母国語になるとは限らない

こどもはもちろん毎日聞く父母のことばを100%理解することが出来る。

でもその言語で話すとは限らない。

たとえば日本人家族が米国に移住し、家庭内で日本語を使い続けても、小さなこどもの場合、父母が使う日本語ではなく、回りの人達が使う英語を話すようになる。

それに対して何の策も取らないと、日本語で聞いて英語で返答するという形になり、日本語が全く話せない日本人になってしまう危険性が高い。

小さなこどもは、周囲で使われていることば(たとえば英語)をほんの2~3ヶ月で習得してしまう。

又回りの子供達と違う言語を使うのに抵抗を感じるので、親が家で話す日本語を100%理解しても、英語だけを話すようになる。

アメリカ人家族が日本に住むようになった場合も、もし子供が普通の日本の幼稚園・小学校に通い始めると、親がいくら毎日家で英語を話していても、こどもは日本語で応答するようになる。

これが現実だ。外国生活の中で親の母国語をこどもにも母国語として習得して欲しいと考える親は、家でただ話すだけでなく、こどももその母国語を口に出すことが出来る環境を整える必要がある。

海外生活の長い日本人家族は、子供を日本人学校に通わせたり、週末だけの日本語クラスに通わせたり、長い休みの時は帰国させて、臨時に日本の学校に通わせる場合が多い。

日本に住んでいるアメリカ人の場合は、インターナショナルスクールやアメリカンスクールに通わせるケースが多い。さもないと親と子供の母国語が異なってしまう可能性が高い。

人はある言語をただ聞くだけでは、そのことばを話せるようにはならない。たとえその意味が100%わかっても。その実例は数えきれないほどある。

こどもの英語教育は、徹底的に読ませて言わせること

「受動的能力」と「能動的能力」の違い

英語に限らず全世界で使われているありとあらゆる言語は、それを使いこなすためには「受動的能力」と「能動的能力」という2種類の能力が備わっている必要がある。

「受動的能力」は「聞く力・読む力」のことで、他人が作った文章を聞き、あるいは読んでその意味を理解する能力を指す。

文章を自ら作り出すのではなく、他人が作った文章の意味を受け止めるということで、「受動的能力」となる。

一方「能動的能力」は「話す力・書く力」を指し、自ら瞬時に文章を作り出し、それを音声にしたり文字にしたりする能力のことを指す。

会話の場合は音声だけなので、「聞く力(受動)」と「話す力(能動)」ということになる。

これら2つは全く異なる能力で、使われる脳の部分も異なる。

鼓膜でキャッチされた音の響きは、Wernicke’s Area と呼ばれる脳の働きで意味(イメージ)に変換される。習得済のことばであれば、Wernicke’s Areaがそれを瞬時に意味化させるので、「聞いた言葉の意味がわかる」ということになる。

一方自分の思い(イメージ)を文章に変換するのがBroca’s Area という脳の部分である。

Broca’s Areaは習得済のことばの必要要素を瞬時に組み合わせ、思い(イメージ)を文章化し、それを神経パルス化し、声帯・舌・唇・下顎の運動神経に連動させて音声化させる。

この一連のプロセスにより「話す」ことが成立する。

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能動的能力の練習をしないとスピーキング力は身に付かない

このように「聞く力」と「話す力」は全く異なる能力であり、又使われる脳の部分も違うので、2つの能力が並行して伸びて行くとは限らない。親が家で話していることばを理解できるのは、その言語に関してWernicke’s Areaの働きが活性化されるためである。

でも親の母国語ではない言語が使われている場所に住んでいる子供達は、回りで使われている言語に関しては、Wernicke’s AreaとBroca’s Areaの両方が活性化され、その言語を聞くことも話すことも出来るようになる。

でも親の話す言語に関してはWernicke’s Areaしか活性化されず、Broca’s Areaによる能動的能力はなかなか身に付かない。

その結果、親の話すことばは100%理解出来ても、その言語を話す能力はゼロという現象が起こり得る。

日本に住む英語を母国語とする親が子供に毎日英語で語りかけても、そのこどもの生活言語が日本語だった場合、すなわち日本の保育園や小学校に通った場合、何か対策を取らない限りこどもは英語を話さなくなり、又話せなくなる。

毎日英語を聞いているにもかかわらず。

ましてや、日本で暮らす普通の日本人の子供に英語を学ばせる時、明確な学習法に従わなければ、こどもは決して英語を話せるようにはならない。

どんなに英語を聞かせ、意味を理解させるように仕向けても、それだけでは絶対に英語の能動的能力、すなわちスピーキング力は身に付かない。

こども英語クラスの様子を見ると、ほとんどの時間が受動的能力向上のために費やされているようだ。

すなわち聞いてその意味を理解させるという学習だ。それを続けることにより、いつか英語が話せるようになると錯覚している指導者も少なく無い。

もし聞かせるだけで話せるようになるなら、外国に住んでいる子供が親の話すことばを全く話せないという現象は起きないはずである。

こどもに本当の英語の実力を身に付けて欲しいなら、「受動的能力」と「能動的能力」の両方の要素を含んだ学習法が必須である。

そのためには徹底的に読ませ、言わせることが重要だ。

こどもの英語教育に影響を与える「音読の習慣」

英語の本を音読で読ませる

回りが日本語で満ちている日本という環境の中では、たとえ親が家で毎日英語を話していても、子供は日本語で返答する可能性が高いことを考えると、普通の日本人の子供に英語を話させるのはそんなに簡単なことではない。

でも良い教材を使えばその問題を解決できる。でも教材に左右されることなく子供の口から英語音声を引き出す方法もある。それは子供に英語のリーディング力(音読力)を身に付けさせることだ。

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私は子供が幼稚園の時から小学6年になるまで、毎日登校前の30分を英語の本を読ませることにエネルギーを注いだ。

黙読ではなく音読で。

意味を理解できない時はヒントを与え、時折本の内容に関して質問しそれに答えさせた。

最初はスラスラ読めないけれど、1年、2年、3年と経つにつれ、リーディングが楽になり、やがてかなりのスピードで読めるようになった。

英語を口に出して言わせる

私の狙いは「英語を口に出して言わせる」ことだった。

本を読むこととスピーキングは同じではないが、イメージ(スピーキングの場合は自分の思い/リーディングの場合はストーリーの内容)を音声にするという意味では同じである。

ということは声を出して読むことはスピーキング練習そのものということになる。又リーディングを通して、語彙が増え、英語の豊かな表現も身につく。

そういえば私も中学生から大学卒業するまで、英語の雑誌・新聞・本を音読していた。

今考えるとその習慣は私の英語スピーキング力にかなり大きな役割を果たしたと確信している。

大切なのはこどもの英語教育を「いつまで続けさせるか」

一番重要な時期が10才~12才であることを殆どの人が知らない

もう1つ大切なことは、子供の英語教育をいつまで続けさせるかである。

私は東京で幼児から大人までのクラスを揃えた英会話学校を始めた。

色々な人達から色々な問い合わせが来たが、子供クラスに関しての典型的質問は「何才から受け入れますか?」であった。

「子供はまだ1才だけど入会できますか?」という質問を受けたこともある。

オムツをしていないことを入会条件にしたので、結果的に4才が最年少の子供ということになった。

「何才から受け入れますか?」という質問は非常に多かったのに、「何才まで続けさせたら良いですか?」という質問をした親は1人もいなかった。

実はその質問の方が遥かに重要なのに。大抵の親は、英語教育はなるべく早期に始めるのが良いと思っているようだ。

それには一理あるが、開始時期は9才未満であるならば、さほど大きな違いはない。

でも子供の言語習得で一番重要な時期は10才~12才であることをほとんどの人は知らない。

10才~12才の時期に脳内で母国語が確立し、生涯そのことばを使うようになる。それ以降に学ぶことばはあくまでも第二言語となる。

それで子供に英語を習得させるためには、最低12才になるまで、あるいは小学校を卒業するまで続けさせないと意味が無い。

小さい時にアメリカで生活し、英語が母国語レベルになっている子供でも、親の都合で9才以下の時に帰国すると、ほんの2~3ヶ月で英語を完全に忘れ、日本語に切り替わってしまう。

ましてや母国語とはほど遠いレベルの英語を習得した子供が小学校の途中で英語学習を辞めたら、脳内に何も残らない。

発音は運動神経と関連しているので、生涯英語を綺麗に発音できるかも知れないが、後から英語を勉強し直さなければならなくなる。

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受験勉強が優先される日本のこども英語教育

こども英語クラスをしていた時、子供が小学校4年になるころ、手土産を持って挨拶に来る親が多かった。

私はそんな時何の用事で来たのかを容易に推測出来た。

ほぼ例外なく「長い間お世話になりました。

おかげで子供は英語が好きになり、びっくりするほど覚えました。

英語は十分勉強できたので、これからは中学受験のための塾に通わせたいと思います」という退会の挨拶であった。

「今英語の学びを辞めたら全部忘れてしまいますよ。少なくとも小学校を卒業するまで続けた方が良いですよ」と本音を言いたかったがが、いつも親の気持ちを尊重せざるを得なかった。

「今までの月謝と時間が無駄になりますよ」とは到底言えなかった。でもそれが日本の子供英語教育の実態だ。

私は2人の子供に毎日30分英語を教えたが、小学校6年の1学期まで続けた。

それ以降彼らに英語の指導をしたことは1度もない。でも彼らはバイリンガルになり、2人とも英語力を生かして米国企業の日本支社で活躍している。

この記事の監修・執筆者
英語スピーキング教材YouCanSpeak、英語リスニング教材YouCanListen開発者
同時両方向通訳者/ 同時通訳セミナー講師。文学博士。NHK ラジオ・TV「Dr. Kinoshitaのおもしろ英語塾」教授等、各メディアで活躍
Twitter:@drkinoshita
開発教材:YouCanSpeak

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By Dr. K. Kinoshita(木下和好): YouCanSpeak 開発者・同時通訳者・元NHK TV・ラジオ 英語教授

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